「で、陸人に呼び出しくらった正騎がなんで雪姫の家にいるのかな?」



ニヤニヤしながら聞く空人の質問に答えたのは雪姫だった。



「わ、私が頼んだの。弓道場で嶋村くんと話したくて…でも、私は道場を辞めた部外者だから……。そしたら陸兄が嶋村くんを呼んだから行って平気だよって…」

「そっか。でも、なんでわざわざ弓道場なの?」


知ってるくせにわざとらしい空人の質問に雪姫は顔を赤くした。


「そ、それは……嶋村くんが弓道をやってるから……」

「え〜正騎って弓道やってたの〜?」

「空人、知ってるくせにしつこいぞ。俺が雪姫に告ったから雪姫が返事くれたんだよ」

「え!正騎、いつの間に?」



あ、そうか。


コイツには昨日、まだ告ってないみたいなこと言ったんだった。

面倒だからそこはスルーして結果報告した。




「雪姫は俺の彼女だからな」



俺は空人にニヤリと勝ち誇った顔をした。

空人はほんの一瞬だけ真面目な顔をしたがすぐにニヤリと笑い返した。

空人の気持ちを知っているから、俺は笑い返した空人に感謝するしかなかった。



「雪姫、良かったね」


カウンター越しに空人に声をかけられた雪姫は少し顔を赤くして照れくさそうに「うん」と返事した。