【完】溺愛したいのは、キミだけ。

「ヒナ、こっち」


『社会科準備室』と書かれた教室の前で立ち止まると、俺はヒナの手を引いて、中へと入った。


「ここ、たぶん誰もいないから」


この教室は地理や歴史の授業で使う資料が置かれている部屋で、基本あまり人の出入りがない。


奥にあった、もはや物置と化した使われていない教卓の前に二人で腰かけて、そこで昼飯を食べることに。


俺がコンビニの袋からおにぎりを一個取り出すと、ヒナは持っていたバッグから弁当箱を取り出してふたを開けた。


「いただきます」


目の前で丁寧に手を合わせる彼女。


思わず彼女の弁当の中身に目がいく。


「それ、もしかして自分で作ったの?」


俺が尋ねると、ヒナはちょっと恥ずかしそうにうなずいた。


「う、うん」


まさかの手作り弁当らしい。すげークオリティ。


「え、ヒナ、料理上手くね?」


「そんなことないよっ。簡単なおかずばっかりだし、半分は残り物だから」


「家でもけっこう料理するの?」


「うん、まぁ。料理はわりと好きだから……」