【完】溺愛したいのは、キミだけ。

聞かれた瞬間、私は慌ててお礼を言った。


「だ、大丈夫っ。あの、本当にありがとう! 助けてくれて」


「いえいえ、無事でよかった。でも、ああいうのはハッキリ断らないとダメだよ。強引な奴いるから」


「うん、ごめんね。気を付けます……」


申し訳なさそうに謝ると、翠くんがそっと私の手を離す。


「いやー、帰ろうとしたらいきなり涼川が男に絡まれてんの見えたからさ、焦ったわ。だからとっさに彼氏のフリしちゃったけど、ごめん」


「ううん、おかげでほんとに助かりましたっ」


ぺこりと頭を下げる私を、翠くんがじーっと見つめてくる。


「涼川って、ナンパとか断れなさそーだもんね」


うっ……。よく分かってるなぁ。


「な、ナンパなんて、今までされたことなかったから……」


正直に答えたら、驚いた顔をされた。


「はっ、ウソだろ」


「ほんと……です」


「マジかー。じゃあこれからは気をつけねぇと。危ないから家まで送るよ」


……えぇっ!