【完】溺愛したいのは、キミだけ。

なにこれ。抱きしめられてるみたい。


まるで本物の彼氏のような振る舞いに、ますます心拍数が上がってしまう。


「チッ。なんだよ。うぜぇな」


それを見て、眉間にシワを寄せ舌打ちする男。


すると、翠くんは私の肩から手を離したかと思うと、今度は手をギュッと繋いできて。


「あーもう、俺から離れちゃダメだって言っただろ。ほら、行くよ」


「えっ、あ……」


そのまま連れ去るように手を引いてスタスタと歩き出した。


わわっ、ちょっと待って。手が……っ。


どうしよう。翠くんと手繋いじゃった!


なんだかもう、一体何が起きているのかよくわからない。


翠くんはそのまましばらく無言のまま歩き続け、少し離れた場所まで来ると、急に立ち止まった。


そして私のほうを振り向くと、心配そうな顔で。


「大丈夫だった?」