【完】溺愛したいのは、キミだけ。

男は強引にグイグイと手を引っ張ってくる。


私は必死で抵抗してみたものの、力が強くてかなわなくて。


「いやっ……」


するとその時。


――ガシッ!


突然、背後から腕が伸びてきて、そのまま誰かに肩を抱き寄せられた。


「悪いけどこのコ、俺の彼女なんで」


……えっ?


体に温もりを感じると同時に、頭の上から響いてきた、聞き覚えのある声。


ウソ。この声は……。


おそるおそる見上げると、そこにいたのはやっぱり、先ほども会ったはずの彼だった。


「み、翠くんっ!!」


顔を見た瞬間、心臓がドクンと飛び跳ねる。


ウソでしょ。信じられない……。まさか、翠くんが助けてくれるなんて。


しかも今、『俺の彼女』って言ったよね?


ナンパ男は翠くんの姿を見るなりパッと手を離し、呆れたような声をあげる。


「はぁ? ウソだろ。彼氏いたのかよ」


翠くんはそこで、さらに私の体をギュッと自分のほうへと抱き寄せた。


「そうだよ。だから、触んないでもらえる?」


「……っ」