【完】溺愛したいのは、キミだけ。

するとその時、すぐ向かいのソファー席に、スーツを着た男の人が一人、店員さんに案内されて腰掛ける様子が見えた。


この暑い中、スーツを着ているだけで大変そう。


お仕事なのかなって思ったけど、よく見ると彼は片手に赤いバラの花束を抱えていて、もう片方の手で持ったハンカチで首元や額の汗を拭っている。


それを見て、なんとなく女の人を待っているのかな、なんて思ってしまった。


「わぁ、あの人、花束持ってるよ」


小声でコソッと玲くんに告げたら、玲くんも向かいのソファー席に目をやった。


「ほんとだ。しかもスーツじゃん。暑そうだな」


「あれってもしかして、プロポーズとかするのかなぁ」


私としては、スーツ姿にバラの花束というだけで、告白やプロポーズを想像してしまう。


「まさか。こんな場所で?」


「うん。だって、赤いバラの花言葉は、『あなたを愛しています』なんだよ」


「そうなんだ。詳しいな」


「花束っていいよね、ロマンチックで。もらったら絶対嬉しいと思う」