【完】溺愛したいのは、キミだけ。

その声にドキッとして顔を見上げたら、そこにいたのはまさかの、翠くんで――。


「……なっ。都築!?」


倉田くんも驚いたように声をあげる。


思いがけない彼の登場に、胸が熱くなって、なんだか涙が出てきそうになった。


ウソ。どうして……?


一体何がどうなってるんだろう。


だって翠くんは今、『ヒナは俺のだから』って……。


「つーわけで、ごめんな」


翠くんは倉田くんにそう告げると、そのまま私の腕を引いて連れ去るように歩き出す。


そしていつも二人でお昼を食べていた社会科準備室の前まで来ると、ドアを開け中に入った。


バタンとドアが閉まり、久しぶりに二人で向かい合って、目を合わせる。


あぁもう、どうしよう。何から話せばいいんだろう。


聞きたいことが、伝えたいことがいっぱいあるはずなのに。


こうしてまた二人きりになれたというだけで、胸がいっぱいになってる。