『どうして翠くんは、私に構うの?』


泣きそうな顔で俺をじっと見上げながら、ヒナはそう言った。


あの時ヒナが俺にどうしてそんなことを聞いてきたのかはわからない。


でも、だったらもう俺の気持ちがバレたってかまわないと思った。


俺がヒナのことを構う理由なんて、ただ一つ。


ヒナのことが好きだから――。


つい最近まで俺の隣で笑ってくれていた彼女が、急によそよそしくなったわけが、俺にはどうしてもわからなかった。


ヒナは俺と目を合わせようともせず、俺に触れられることすら嫌がっているように見えた。


それなのに、隣の席の倉田とは笑顔で話していたりして。


不安と焦りと嫉妬でどうにかなりそうだった。


俺が何かしたのか? それとも、俺に構われるのが嫌になったのか?


潤んだ目で俺を見上げ問いかけてきた彼女のことを、どうしても失いたくないと思った。


こんなに想ってんのに、どうして伝わらないんだよって。


好きだからに決まってるだろ。


他に理由なんてあるわけないだろ。