【完】溺愛したいのは、キミだけ。

「涼川さん」


耳元で、誰かが私を呼ぶ声がする。


「おーい、涼川さん」


聞き覚えのあるこの優しい声は、たしか倉田くん。


「起きて~。じゃないともうすぐ武藤がくるぞー」


その声にハッとして頭を上げたら、隣の席の倉田くんが私の目を見ながらクスッと笑う顔が見えた。


「ははっ。よかった、起きた」


「う、ウソ……。私、寝ちゃってた?」


「うん。ぐっすり寝てたから起こそうか迷ったんだけど、次武藤の授業だからヤバいと思って」


たしか私、昼休み江奈ちゃんと一緒にお昼を食べたあと教室に戻ってきて、自分の席に着いたはいいけれど、色々考えてたら辛くなってきて。


そのまま机で突っ伏していたことまでは覚えてるんだけど、その後記憶がないんだっけ。


私ったら、いつのまにか寝ちゃってたんだ。


「ご、ごめんね。助かりました」


慌ててぺこりと頭を下げ礼を言ったら、倉田くんがふと気が付いたように声をあげる。


「あ、ちょっとまって」


「え?」


そして片手で私の前髪に触れたかと思うと、手櫛でとかすように整えてくれた。


「はい、直った。前髪が乱れてたからさ」


「えぇっ! やだ、どうもありがとう」


あぁもう、何やってるんだろう。恥ずかしい。