【完】溺愛したいのは、キミだけ。

背中に感じる翠くんの体温と、優しい腕の感触。


いつもなら彼に触れられるとドキドキして嬉しいはずなのに、今日は胸が苦しい。


思わず昨日見た、春田さんを抱きしめる彼の姿を思い出してしまった。


ふつふつと疑問がわいてくる。


どうして翠くんは、軽々とこういうことをできるんだろう。


だって昨日、春田さんにも同じことをしていたのに。


もしかして、誰にでもそうなのかな?


誰にでも思わせぶりなことをする人だったのかな?


私だけじゃなかったのかもしれない。今までのも、全部。


特別なんかじゃなかったのかも。


私がただうぬぼれて、勘違いしていただけで……。


そう思ったらなんだかすごく悲しくなって、いたたまれない気持ちになった。


「は、はな、して……」