【完】溺愛したいのは、キミだけ。

「ごめん。あの、今日は友達と約束してて……」


なんて、実際は江奈ちゃんと特に約束していたわけではないのに、断ってしまった。


いつも江奈ちゃんは私が翠くんに誘われたって話すと「行ってきな」と言って送り出してくれるんだけど、やっぱり今はどうしても翠くんと二人きりで話せる気がしなくて。


普通に接することができないって思ったから。


そしたら翠くんはちょっと残念そうな顔をしたかと思うと、眉を下げて笑った。


「そっか。なら仕方ないな~」


「ご、ごめんね。それじゃまた……」


そのまま目を合わせず江奈ちゃんの元へ向かおうと歩き出す。


そしたら次の瞬間バッと腕を掴まれ、引き寄せられて。


そのまま後ろからギュッと抱きしめられた。


……えっ?


「あの、翠くん……っ」


「なぁ。やっぱり、元気ないだろ」


耳元で囁く彼の声を聞いて、また心臓がドクンと跳ねる。


「なんかあった?」