帰還前日のこの日、私は帰りの会で子ども達を集めて話をする。

 「みんな、保育園に随分慣れましたね。ここで少し残念だけれど、お知らせがあります。 私は明日、羊族の村に帰ることになりました」

 そう言うと、子ども達は可愛い大きな目をさらに大きくして驚いているし、その尻尾はピンと立った後にしょげたように垂れ下がる。
 
 「どうしてハルナ先生は帰るの? ずっとここに居たらいいのに……」

 そんな言葉をかけてくれたのはミケーレさんの娘のニーナちゃん。

 「羊族の村にはね、私にとってのお父さんもお母さんも居るの。ここへはお手伝いで来てたから。もう大丈夫そうだなってことで帰るのよ」

 そんな私の言葉に子ども達は少し考えて言った。

 「ハルナ先生のパパとママはハルナ先生の帰りを待ってるの?」

 そう聞いてきたのはマーキス君、大人しい賢い男の子だ。

 「うん、早めに帰って来てねって言われてたのよ。待っててくれてるの」

 そんな会話を聞いたヴィヴィアンちゃんは言う。

 「パパとママが待ってるなら、早く帰らなきゃね。きっと心配してるもんね」

 彼女は好奇心旺盛で、ここに来て一番に迷子になった子。

 王宮で王妃付きメイドのお母さんに連絡が行くと、光の速さで見つけてくれたが心配をかけたことは彼女にとって記憶に新しいのだろう。

 こうして、私は子ども達にお別れを告げるとその夜は国王陛下夫妻と夕食を共にし、保育園立ち上げを労われた。

 「ハルナがここを気に入ってくれたらなんて淡い期待もあったけれど、子ども達から聞いたわ。羊族に家族が出来ているのね。それなら、大切なお嬢さんは早く返さなくてはね」

 王妃様は少し寂し気に言う。
 そんな王妃様に寄り添って陛下は言った。

 「ハルナはしっかりしているから、あわよくばレザントの嫁にとも考えたが。あれとは合わんな! ハルナが可哀想だから、即諦めた」

 にこやかに言うことが、結構息子に厳しくって私は思わずクスッと笑ってしまう。