子ども達と過ごして、帰る準備をしていればあっという間に王都の保育園とはお別れの時が迫っていた。

 ネコ科の子たちは甘え方がまた独特で、ツンデレの子もいればデレデレの子もいたりして、なかなか楽しかったのだけれど、ここはやっぱり私の居場所ではないみたいな感じでお邪魔していますという感じが消えることはなかった。
 
 お手伝いで来ている落ち人だからと、たまに騎士さんたちに声をかけられたり、文官さんにも食事のお誘い頂いたりしたが、丁重にお断りしていた。
 
 カーライドさんのいい笑顔が浮かぶし、ライラさんもローライドさんも気をつけなさいと言っていたし、そもそも仕事で来ているのだからという考えでいた私。

 明後日には羊族の村へ帰るという頃にキャロルさんが楽しそうに言った。

 「とうとう、ネコ科のいいとこぞろいなお坊ちゃんたちは誰もハルナを落とせなかったか」
 
 その言葉に、首を傾げていると給食とおやつの片付けが終わったフレイさんがニコニコと笑いつつ言う。

 「あぁ、あのあわよくば陛下のお気に入りの落ち人を嫁にしようという考えの愚かな奴らか」

 フレイさん、笑顔で毒舌が効いてる。
その微笑みかた、ミケーレさんにそっくりです!
 
 「そうそう、ハルナにはきっとすでに羊族に良い人がいるでしょうにね」

 まさかのマロンさんまで、この事態を知っていたとは驚きを隠せない顔をしているとミューナさんが言った。

 「本当に。誘われてる姿を最初に見かけた時はちょっとハラハラしたけれど、ハルナはけっこうバッサリとお断りしてたから、最近は振られる方の顔を見るのが楽しくてね」

 クスクスというミューナさんもなかなかのつわものの様です。
 言ってることが強いです……。

 「あれってそういう思惑があったなんて知らなかったの。でも、羊族でお世話になってる方々に誘われても付いていかないこと、路地裏には行かないとか来る前に言われたことがチラついてて」

 そんな私の返答に、四人は深く頷いてそしていい笑顔で言った。

 「ハルナのことをちゃんと思って考えてくれる方々の様で良かったよ。ハルナ、ネコ科は種によっては狡猾だから、これで良かったんだよ」

 そんなわけで、私はきちんと無事に羊族の村へと帰還できそうです。
 まさか嫁にと思われてたとはつゆとも本人は気づきませんでした。

 まぁ、確かに見た目は良い感じの人が多かったけれども……。
 人は見た目じゃないしね。

 そう、この事態を聞いて私はやっぱり羊族の村が好きだなと思ったし嫁と言う単語で浮かんだ人を想い返したりもした。
 早く帰りたくなったころ、その日はしっかりと訪れる。