「この本は貴方に幸福を与えてくれますよ」

「は、はぁ……」

女性はテッシュ配りの感覚で、1冊の本を私に手渡した。


「貴方は、もう1人の自分が欲しいと思ったことはありませんか?」

「・・・思ったことがないと言ったらウソになります」

と、曖昧な返事をした。

だって本当のことを話したら、そのまま変な店に連れ込まれそうだし。

「それは完璧な貴方が作り出せる本。ですが、最後に一つだけ。取扱説明書は最後までしっかりとお読みください。それでは失礼します」

「ちょ、まっ……」

女性はそれだけを言い残し、私の前から消えた。