続・電話のあなたは存じておりません!

 今までどんな流れでエッチしてたっけ?

 ふと、脳内に歴代彼氏を思い出し、私はがっくりと項垂れた。

 初体験は大学生の頃の彼氏で、二番目は和希だ。どちらもその場の雰囲気に流されて、なし崩し的にそうなった気がする。

 無論、そのムードに持ち込むのはいつだって彼氏の役目で、私は完全なる受け身だった。

 ーーだめ、絶対に誘えない。

 温風で髪を乾かし、普段どおりトリートメントをつける。

 肩から下の腕や脚全体にボディクリームを塗って、私はベッドに体を埋めた。

「早く抱いてよ、或叶さん……」

 *

 仕事中、ポンとエレベーターの機械音が鳴り、私たちは笑みを貼り付けた。

 銀色の扉を抜けて歩いてくる"彼"を見て、私は、あ、と思う。

 和希だ。

 以前は彼が歩いて来るまで受付で待っているこの時間が好きだった。

「いらっしゃいませ」

 型式通り会釈をして、お客様を出迎える。

「来栖商事の進藤ですが、営業二課の坪倉さん、お願いできますか?」

 和希は明らかに私に話し掛けていた。その時他所から電話が鳴り、由佳が対応する。

「営業二課の坪倉ですね? 失礼ですが、お約束は」

「ばっちり十一時にしてあるよ」

「少々お待ち下さい」