続・電話のあなたは存じておりません!

「そうかな?」と言い、彼はキョトンとした顔で自分の手を見つめる。

「……みっ、見せて下さい」

 言いながら手を伸ばした時、誤ってワイングラスを倒してしまった。

 ーーやだ、うそっ!

 倒れたグラスは落ちて割れる事こそ免れたが、或叶さんのスーツの下をしっかりと汚した。

「あ、あの……っ、やだ、ごめんなさい……っ!」

 私は慌てて立ち上がり、手前のおしぼりを持って彼へと歩み寄る。

「大丈夫だよ、これぐらい」

 彼は手を挙げて私を制し、自らで汚れを拭きとっていた。

「お客様、大丈夫ですか?」

 ギャルソンの方が取り計らい、清潔なタオルやおしぼりを用意してくれる。

 立つ背のない私は、その場で立ちすくむしかなかった。

 順に運ばれてくる料理、全てに手をつけて、食事が終わった。

「そろそろ帰ろうか?」

 既にカードでお会計を終えていた或叶さんに声を掛けられて、私は意気消沈したまま席を立った。

 やっぱりダメだった、と思うと、ハァと物憂いため息が浮かんだ。

 ーー誘いたくても、誘えない。

 なんて不甲斐ないんだ、私は。