続・電話のあなたは存じておりません!

「芹澤 朱音さんですね? ちょっとお話いいかしら?」

「え、……と?」

 失礼ですがあなたは、と続けようとするが、由佳と沙奈江に手元をはたかれた。

「谷崎専務のお嬢さんだよっ」

 ーーえ。この女性(ひと)が?

 コソッと囁かれるが、彼女には丸聞こえだ。

谷崎(たにさき) 瑞穂(みずほ)といいます。直接あなたにお話があって来たの。ご一緒して貰える?」

「えっ、と。あの、でも。……私、今仕事中なので」

 今すぐ来いという口ぶりに動揺した。

「父には先に断ってあるから平気よ? さ、早く来て?」

 見た目によらず、強引だな……。

「はい」と返事をして、席を立った。

 由佳と沙奈江に「ちょっと抜けるね?」と断りを入れる。二人は妙な表情(かお)で目を見合わせていた。

 彼女たちは私と同じ事を考えていたのかもしれない。

 女の勘ってやつが、危機的状況だと知らせているような気がした。

 先日、急用で谷崎専務を訪ねた或叶さん。

 デートの予定にキャンセルが入って、日曜日にこの女性と食事をしていた。

 そして昨日、私の顔を見てため息をついた専務。

 その時沙奈江から聞いた「結婚」の情報。