続・電話のあなたは存じておりません!

 優しい手つきで頭を撫でられると、それまで固くなっていた気持ちが徐々に解けていくようだ。

「おやすみ、芹澤さん」

「お、おやすみなさい」

 助手席を降りて、私は彼に手を振った。

 車のテールランプを見送り、胸の奥がギュッと痛くなる。

 あなたの優しさが時に不安になる。

 既に私と別れるという選択を考えてはいないだろうか?

 曖昧な気持ちを引きずったまま、私は自宅へと帰った。

「今日はキス……されなかったな」

 ボスンとベッドにダイブして、ぼんやり呟いてみる。

 或叶さんは大丈夫だって言ってたけど、それ以上の言葉は無かった。

 少なからずとも、幻滅されてしまったのかもしれない。

 美味しいご飯とお酒で気分良く帰って来たのに、さっきの告白で台無しになった。

「やっぱり、言わなきゃよかった」

 ーーせっかくの一カ月記念日なのに。

 ポツリと呟き、またため息を浮かべた。

 *

 翌日になり、意外な人物が私を訪ねにオフィスへ現れた。

 その人がエレベーターホールから歩いて来るのを見た瞬間、ピキ、と笑顔が固まった。

 小柄で華奢な髪の長い女性。

 日曜日、或叶さんとカフェで食事をしていたあの綺麗な女の人だった。