続・電話のあなたは存じておりません!

 車が静かに停車し、車窓を見ると既に自宅マンションの前だった。

 首を動かしてエントランスの前を見つめ、今日はそこに和希がいない事を確認した。

「あの、来栖さん…」

「……うん?」

 パチンとシートベルトを外してから、私は真摯に彼と向き合った。

「金曜日に言った、首筋の……跡なんですけど」

 そこで一瞬だけ、彼の眉がピク、と反応する。僅かに眉をしかめて、すぐにまた戻る。

「嘘ついて、ごめんなさい。アレ、ほんとはキスマークなんです」

「………。うん」

 或叶さんは私から顔をそらし、フロントガラスの先を見つめた。

「木曜の夜、あなたに送って貰ってからそこのエントランスで……元カレに待ち伏せされてて。
 何でそうなったのかは分からないんですけど、私が来栖さんと付き合ってるのが気に入らないって言われて……それで、無理やり……」

 言葉が続かず、最後は尻すぼみになった。情けなさと羞恥心で、顔全体が熱くなる。

 体が縮こまり、俯くと、ふわっと頭を撫でられた。

「大丈夫」と或叶さんが言う。

「大丈夫だから」

 顔を上げると、彼は穏やかに微笑んでいた。