続・電話のあなたは存じておりません!

「金曜日にちょっとしたトラブルを持ち込まれてね、昨日までそれの対策にあたってたんだ。早くに片付いてホッとしたよ」

「そうなんですか……」

 その内容は、果たして私が聞いて分かるものだろうか?

 聞くべきか。聞かないべきか……。

「あの、トラブルって?」

「うん。営業がやらかしたミスだよ。自分じゃどうにもならないからって泣きつかれてね」

「そう、だったんですか。大変だったんですね……」

 やっぱり、詳しい内容は話してくれないか。

 そのミスとやらが、何をどうすればあんなに綺麗な女の人とデートする事になるんだろう?

 私は眉をしかめ、俯いた。

「今日ちょっと雰囲気違うね?」

「え…?」

 一体何の事? と疑問を感じながら首を傾げる。

「……化粧、かな? そういう感じも可愛いね?」

 ーーあ。

「ありがとう、ございます……」

 いつもの大好きな笑みを向けられて、私は恥ずかしさに俯いた。

 普段と違うアイメイクは、泣いた跡を隠すためのそれなのに。単純に気づいて貰えるのが嬉しい。

 食事をしに着いた先は、一カ月前にも連れて来て貰った、夜景個室のあるイタリアンバルだった。