「そうなんですか、忙しいんですね?」

『……まぁ、』

 そこで若干言い淀み、彼が咳払いをした。

『連休中、何処かに出かけましたか?』

「あ、いえ。近所ばかりで特には」

『そう…ですか』

 何となく話の腰を折ったような気がして、私はベッドに座ったままシーツについた手を見つめた。

 何か話題を振らないととアレコレ考えを巡らせる。

 行き着いたのは自虐的なネタだった。

「実は私、連休前に彼氏に振られたんですよね」

『え、』

「しかもその日私の誕生日ですよ?
 泊まりも予定してたのにたった半年で振られて……連休は見事に失恋休暇です。最悪にどん底でした」

 ただクルスさんからの間違い電話が無ければ、まだそのどん底に沈んでいただろう。

 そう思うと、やはり声だけの存在でありながらも、彼との会話に癒されていたのは確かだ。

 クルスさんは無言だった。きっとネタが重すぎてどう答えて良いのか考えあぐねているのだろう。

「あ……、ごめんなさい。反応に困りますよね、こんな話題」

 愚痴っぽくなった自分を思い、羞恥心すらわいた。

『芹澤さん、また無理して笑ってるんですか?』

「え…」

『高校生のあなたも、本気で辛くて悩んでいたのに。よく笑ってましたよね。見ていてこっちが辛かったです』

 ーー高校生の頃の、私……。