「お鍋のヘルシーさに頼って、体型キープしないと」

散々お菓子を食べておいて何を言ってるのって感じだけど、当日にドレスが入らないってことだけは避けるつもり。

「どこが太ってるんだ」

突然、佑が私の脇腹をむにっとつまんだ。私は咄嗟に変な声で呻き、それから佑に猛然と食ってかかった。

「ちょっと!女子の脇腹を無造作につままないで」

佑は両手を顔の横で万歳にし、『もう触ってません』のアピールをする。

「ほとんどつまめなかったぞ。咲花はもう少しぽっちゃりしてもいい」
「ありがたいお言葉ですが!お腹つまむのはなし!」
「わかったわかった。悪かった。でも、俺は元気にたくさん食べる咲花が好きだな」

佑はそんなつもりはないのだろうけれど、好きだなんて言われてしまうと余計に頬が熱くなる。

「ありがとう!それはウエディングドレスを着終わったらにする!」

恥ずかしくて嬉しくて混乱してしまう。佑の距離が近い。お腹つままれちゃったんですけど。好きとか言われちゃったんですけど。はあ、私ばっかり意識しちゃうなあ。

「じゃあ、奥さんの要望通り、ヘルシーな鍋でも作りましょう」
「これ見終わったらね。お願いします」

佑は左手を私の右手の上に戻す。どきんとする私にはまったく気づかず、再びテレビの液晶を眺めはじめるのだ。
もう、ドキドキさせないでほしい。