「食べ終わったら、海岸を散歩してから帰るか」
「いいね。ちょどいいかも」
「何がちょうどいいんだ?」
「ここからの帰り道に、チーズケーキ専門店があるの。散歩してお腹少し空かせたら、心置きなく食べられるでしょ」
「……今もケーキ食べてるけど、食べられるのか?」
「うん」
にこにこ満面の笑みの咲花。落ち着いた美人の咲花は、俺や傑にはこういう子どもっぽい顔をする。
可愛いなと思いつつ、咲花の頬のクリームを親指でぬぐった。
「ついてる」
「ありがと」
そのまま親指を自分の口に運ぶと、咲花が照れたように笑った。
「なんか、カップルみたいだねえ」
「カップルだぞ、一応」
咲花さえよければ、俺はもう少し恋人らしくしてもいい。こんな形でも夫婦になるのだ。
あくまで“咲花さえよければ”だけれど。
「ふふ、早く食べちゃうね。お散歩しよ」
ホテルから出て、海岸線に降りる。砂浜は犬の散歩で人が通るくらいだ。波があまり高くないのかサーファーの姿もまばらだ。風が心地よい。
「佑」
咲花が「ん」と右手を差しだす。
察しの悪い俺が計りかねていると咲花が俺の左手に右手を絡めた。
「カップルなんでしょ。手、繋ごう」
咲花が頬を赤くしてはにかんだ笑顔を見せる。ぐっと呼吸が詰まるような感覚がした。
急に可愛いことをされて、内心混乱していた。咲花と手を繋いで歩いている。
別に子どもの頃はよくあっただろう。もっと言えば、ここひと月半ほどは、一緒に寝起きしているんだぞ。手を繋ぐくらいなんだ。
ここでおどおどするのはあまりに男らしくない。恋人同士らしくなっていいと思ったのは俺だ。
「いいね。ちょどいいかも」
「何がちょうどいいんだ?」
「ここからの帰り道に、チーズケーキ専門店があるの。散歩してお腹少し空かせたら、心置きなく食べられるでしょ」
「……今もケーキ食べてるけど、食べられるのか?」
「うん」
にこにこ満面の笑みの咲花。落ち着いた美人の咲花は、俺や傑にはこういう子どもっぽい顔をする。
可愛いなと思いつつ、咲花の頬のクリームを親指でぬぐった。
「ついてる」
「ありがと」
そのまま親指を自分の口に運ぶと、咲花が照れたように笑った。
「なんか、カップルみたいだねえ」
「カップルだぞ、一応」
咲花さえよければ、俺はもう少し恋人らしくしてもいい。こんな形でも夫婦になるのだ。
あくまで“咲花さえよければ”だけれど。
「ふふ、早く食べちゃうね。お散歩しよ」
ホテルから出て、海岸線に降りる。砂浜は犬の散歩で人が通るくらいだ。波があまり高くないのかサーファーの姿もまばらだ。風が心地よい。
「佑」
咲花が「ん」と右手を差しだす。
察しの悪い俺が計りかねていると咲花が俺の左手に右手を絡めた。
「カップルなんでしょ。手、繋ごう」
咲花が頬を赤くしてはにかんだ笑顔を見せる。ぐっと呼吸が詰まるような感覚がした。
急に可愛いことをされて、内心混乱していた。咲花と手を繋いで歩いている。
別に子どもの頃はよくあっただろう。もっと言えば、ここひと月半ほどは、一緒に寝起きしているんだぞ。手を繋ぐくらいなんだ。
ここでおどおどするのはあまりに男らしくない。恋人同士らしくなっていいと思ったのは俺だ。



