愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました

「咲花といたい」

口にしてからまるで告白みたいだったと気付く。咲花も真っ赤な顔で俺を見ている。勢いがついてしまい、俺はそのまま告げる。

「恋とか愛とか、俺には少し難しい。だけど、咲花といると安心する。たぶん、他の女性じゃ駄目だと思う。元婚約者の美里と結婚すればそれなりの家庭は築けたかもしれない。だけど、今の生活が楽しいから、咲花と婚約できてよかったと感じている。これからも咲花といたい」

つぎはぎの言葉じゃうまく伝わらないかもしれない。だけど、今の素直な気持ちを伝えておくべきだ。

「始まりは親同士の話だ。だけど、今はもうそれだけじゃない。それに咲花に感じてきた子どもの頃からの温かい気持ちは、何ひとつ変わらないよ」

咲花が苦しそうな目を見開いた。涙が瞳いっぱいに溜まって、今にも零れ落ちそうだ。

「佑……ごめんなさい。私たちの今を不満に思っているわけじゃなかったの」

かぶりを振った咲花の瞳からぽろぽろと涙がこぼれた。綺麗な顔が涙に濡れるのは嫌で、その頬を親指でぬぐう。

「佑の言葉、嬉しい。私も佑との生活が楽しいし、こうして暮らしていたい」
「逆に聞くけれど、咲花は俺でいいのか？婚約者に逃げられるような男だぞ」