愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました

「探しているのは、向こうの親御さんのためだ。探偵をやとって探させている。警察はただの家出は探してくれないからな」
「見つかったら、どうするの？」
「俺は彼女と正式に婚約解消をしていない」

咲花がようやく俺の顔を見る。

「彼女との関係を終わらせておきたい。咲花と胸を張って結婚するためにも」
「ねえ、佑。本当にそれでいいの？」

咲花が顔をくしゃっと歪めた。苦しそうな口調だ。

「ずっとずっと思ってきた。佑は好きな人と結婚しなくていいの？恋した女性を奥さんにしたいとは思わないの？私でいいの？」
「美里のことなら恋愛じゃなかったと言ってる」
「そうじゃない。私も佑も、親が決めた相手と結婚するなんてこと自体がおかしなことだわ。きっと最初からおかしい」

急にどうしたのだろう。あれほどお互いなら安心だと言い合って婚約したのに。

ふと、咲花の目を見て思った。彼女は不安なのだろうか。
俺にできることはなんだろう。口約束でも、咲花の将来を安心させてあげることじゃないか。俺は自分の中でばかり誓っておいて、考えてみればはっきり言葉にしたことがなかったのだ。

「俺は咲花と結婚したいと思ってる」

思いのほか言葉はすんなりとでてきた。