愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました

佑はシャワーに行き、私は食事を仕上げた。それから夕食まで、佑は必要最低限の荷物を出してきて、仕分けしていた。

「必要なものは追々買い足して行こう」

片付けながら佑が言うので、文庫本を読んでいた私は顔をあげる。

「そうだね。って、佑、私のシャンプー使ったでしょう」

洗いざらしの髪からふわんと香るのは馴染んだ香り。佑がにっと笑った。

「さっき風呂に入るとき断ったぞ。咲花は、シチューの世話を焼いていて聞いてなかったな」

う、確かにそうかも。初めての料理が大失敗にならないように慌てていたものなあ。

「悪いな。俺のもの、まだ買ってないんだ」
「いいけど、ホワイトローズブーケの香りよ、それ」
「うん、頭が甘ったるい。あと、身体も」
「ボディソープも使ったのね」
「断ったって」

楽しそうに笑う佑。お揃いの香りって夫婦っぽいなあ。

「よければ、ふたりで使えるもの買おうか?」

お揃いの香りという言葉に勝手にキュンキュンきている私が提案すると、あっさりと佑は首を横に振る。

「いいよ。俺は俺で用意する」
「私がこんな甘い香りじゃなくすれば、ふたりで使えていいじゃない」

すると、佑が私の髪をくしゃっと撫でた。いきなりのことに静かに固まる私。

「自分がこの匂いだと甘ったるいけど、咲花から香るといい匂いだ。そういえばずっとこの香りだろ?変えなくていいよ」

顔をあげられない。佑の顔が見られない。
突然の接触も驚いたけど、私の香りまで覚えていてくれたとは思わなかった。
どうしよう、恥ずかしいような嬉しいような。