さすがの俺もショックを受けた。
美里とは、人生の伴侶になるものとして上手に接してきたつもりだ。性的な接触こそなかったが、季節ごとの贈り物は欠かさなかったし、会えば恋人同士として紳士的に振舞ってきたつもりだ。美里にも俺を嫌っているような素振りは見えなかった。

だからこそだ。どうして不意にいなくなってしまったのかわからない。
いったい、俺のどこに落ち度があっただろう。
つまらない男だっただろうか。嫌味な男に見えていただろうか。表にこそ出さなかったが、それなりに反省点を並べては重苦しい気持ちになった。

八木家の両親は我が家に平謝りの状態だったけれど、俺が悪いのだったら、逆に申し訳ない。榛名家としても美里を探すことに協力すると、せめてもの思いやりは見せた。

一方で父はワンマンなままだった。

『美里さんの失踪は予想外だが、おまえの結婚は取引先やうちの幹部たちには少しずつ話していたんだ』

大方、酒の席あたりで言ったのだろう。佑もそろそろ身を固めさせることが決まっている。陸斗は安泰だ。とでも。
そして俺の結婚式は社内外的に重要なイベントとして扱われるだろう。

『結婚の予定は来年というのはずらしたくないところだな』

父親の勝手な物言いに驚いた。いくら大事な行事とはいえ、相手もいないのに結婚は続行?
どうするつもりかと思っていたらこうだ。

『咲花ちゃんはどうだろう』