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咲花は全快といっていいほど元気になった。左足のヒビはしばらくギブスをしていたけれど、すぐに包帯だけで動き回れるようになった。
眠っていた時間が長いため、脳波などを再検査したが、これも母子ともに問題なしだ。
思えば、咲花はかなりのストレスを抱えていたのかもしれない。あの昏睡のような眠りは、防衛本能の一種だったのだろうか。ともかく、咲花が回復してよかった。
両親同士の関係はいまだ完全な解決とはいかないものの、双方の両親ともに俺たちの結婚を認め、咲花が無事に子どもを産めるよう見守ってくれることとなった。
一応の解決と思っていいだろうか。
退院から少し経ち、骨折についても平常通り暮らしていいと医師からOKが出た頃、俺は咲花を車で連れ出した。お腹の赤ん坊は七ヶ月の後半だ。
「どこに行くの?」
助手席で咲花は嬉しそうにしている。ドライブ自体が久しぶりだ。
「体調がつらかったらいつでも言ってくれよ」
「大丈夫よ」
「俺にはわからないから、はっきり言ってほしいんだ」
咲花はふふと笑って答える。
「一泊分の荷造りをさせられたし、今日は小旅行なわけでしょう。無理はしないし、つらい時は言うから」
「頼むよ」



