昼過ぎに榛名家と不破家が病室に集まった。
場は気まずい空気だ。
咲花の父親はうちの父親の顔を見たくもないだろうし、父は父で面倒なことで呼ばれたと思っているかもしれない。
しかし、今日この場で呼ばなければいつ呼ぶというのだろう。大事な人には、いつか会えなくなってしまう。それは明日のことかもしれないのだ。

「佑くん、どういうことだ。咲花が入院というのは」

咲花の父親が言う。俺たちの真ん中で咲花はすやすやと眠っていた。一度目覚めたきりで、その後は起きていない。

「咲花は事故に遭って今眠っています。身体に異常はありません」
「事故……」
「今日は、お義父さんとお義母さんに咲花に会ってほしくてお呼びたてしました」
「咲花」

ベッドに歩み寄った咲花の母親が呼びかける。包帯を巻かれ眠る咲花を見て、咲花の父親も思うところがあったようだ。ベッドに歩み寄り、咲花を呼ぶ。

「俺たちが入籍したことはご存じのことと思います。今、咲花のお腹には子どもがいます」

親たちが息を飲むのがわかった。
咲花の両親が顔を歪め、俺と眠る咲花を交互に見る。

「どういうことだ。佑くん、私たちはきみたちの結婚を許してはいない」
「俺と咲花は愛し合って結婚しました」
「咲花は、私たちの娘だ!」

病室には不似合な怒声に、咲花が身動ぎした。もぞもぞと動いたかと思うと、再び目をぱっちりと開け覚醒した。

「うるさいなあ……」