愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました

俺もまた、咲花が一度目覚めたことで多少気分がラクになった。しかし、完全に回復するまでは傍にいたいので、仕事の都合をつけ、しばらくは病院で付き添うことにする。

昨夜の不安は和らいだけれど、咲花とお腹の子を失うのではという恐怖は本当にぞっとするものだった。今回は、大きな事故ではなかったけれど、一歩間違えば、咲花も赤ん坊も危険だったのだ。そうすれば、咲花と両親はもう一度再会することもなく別れることになってしまう。

咲花が無事でよかったと思いつつ、頭の中では目まぐるしく考えてしまう。
別れはいつだって突然にやってくる。咲花は運が良かっただけなのだ。このままでいいのか。

……もしかして、これは機会になるかもしれない。
ちょうど俺の携帯が鳴る。父親からだ。

『どうした、仕事を休んでいるのか。例の件は佳境だろう』

少し悩んだが、思い切って言う。

「親父、これからちょっと出られるか?」
『なんだ?』
「お袋を連れて、指定する病院にきてほしい」

何か言おうとする気配を押し切るように言った。

「頼む」

電話を切ると、すぐに咲花の父親の会社に連絡をした。