「もしかすると精神的なものもあるかもしれません」
心配する俺に、医師は言う。
「精神的なものですか?」
「妊婦からすると、事故はすごく怖かったでしょう。お腹の赤ちゃんの生命を脅かされたわけですから。奧さんの脳は軽いショック状態なのかもしれませんね」
「それは……自然に目覚めるものなんですか?」
「大丈夫。身体に異常はありませんから、いずれ目覚めます。目覚めてから、記憶の混濁や一時的な健忘が起こる場合もありますが、稀ですね」
思いもかけないことを言われ、俺は恐怖のような焦りのような感覚を覚えた。如何に身体が大丈夫と言っても、眠り続ける咲花を見て平静ではいられない。
不安な気持ちで、一晩付き添った。
咲花に何かあったら、お腹の子どもに何かあったら……そう考えるだけで不安だった。
翌朝、朝陽が差し込む病室。
うつらうつらとしていたようだ。ふと、目の前の咲花が身動ぎした気がした。
はっと顔を上げる。咲花の肩が震え、それから大きな目がゆっくり開いた。
「咲花!」
俺の呼びかけに、咲花は寝ぼけたように視線だけ巡らせた。身体を起こそうとして、痛みに気づいたのだろう。
「あたっ、たたた」
「駄目だ。寝ていて」
咲花は自身の置かれた状況を把握できていないようで目を瞑り、しばし頭を押さえていた。次の瞬間、身体の痛みも何もかもすべて無視して飛び起きた。
心配する俺に、医師は言う。
「精神的なものですか?」
「妊婦からすると、事故はすごく怖かったでしょう。お腹の赤ちゃんの生命を脅かされたわけですから。奧さんの脳は軽いショック状態なのかもしれませんね」
「それは……自然に目覚めるものなんですか?」
「大丈夫。身体に異常はありませんから、いずれ目覚めます。目覚めてから、記憶の混濁や一時的な健忘が起こる場合もありますが、稀ですね」
思いもかけないことを言われ、俺は恐怖のような焦りのような感覚を覚えた。如何に身体が大丈夫と言っても、眠り続ける咲花を見て平静ではいられない。
不安な気持ちで、一晩付き添った。
咲花に何かあったら、お腹の子どもに何かあったら……そう考えるだけで不安だった。
翌朝、朝陽が差し込む病室。
うつらうつらとしていたようだ。ふと、目の前の咲花が身動ぎした気がした。
はっと顔を上げる。咲花の肩が震え、それから大きな目がゆっくり開いた。
「咲花!」
俺の呼びかけに、咲花は寝ぼけたように視線だけ巡らせた。身体を起こそうとして、痛みに気づいたのだろう。
「あたっ、たたた」
「駄目だ。寝ていて」
咲花は自身の置かれた状況を把握できていないようで目を瞑り、しばし頭を押さえていた。次の瞬間、身体の痛みも何もかもすべて無視して飛び起きた。



