愛妻御曹司に娶られて、赤ちゃんを授かりました





夏が近づいてきたなという陽気が続き、俺は忙しく働いていた。
舵とりをする大きなプロジェクトが始動していて、とにかく決めることが多い。来週からは出張もいくつか入ってくる。安定期とはいえ、咲花を家にひとり残して行くのは心配で、傑と里乃子さんに様子を見に行ってくれるよう頼んでいくつもりだ。

会社に電話が入ったのは午前の終わりの時刻だった。

「佑さん、お電話です。警察署から」

え?と聞き返すより先に電話を取った。不安が身体の奥底から浮かび上がってきて、首元まで埋まる感覚がする。
電話は自宅の最寄りの警察署からだった。

「咲花が?」

電話を切っても信じられない気持ちだ。
咲花が事故に巻き込まれたという。嘘だろう。咲花が?
現時点では怪我をしたという情報しかない。お腹の赤ん坊のことも何も言われていない。

「すまないが、家族が事故に遭った。任せる」

部下たちは顔色を変えたが、すぐに俺を送りだしてくれた。
タクシーで向かった病院。教えられた病室で、咲花はぐっすり眠っていた。