佑は私の顔を見た瞬間から、あの雨の日みたいな表情をしているんだもの。今この瞬間も同じようなことを考えているんだろうなって。
私はごまかすように、佑の背を拳でぽこんと叩いた。
「いて」
「今日はよろしくね」
広々とした個室で両家向かい合う。一応、この会食が婚約式にあたるのだろう。
「こんな形のご縁になってしまったけれど、改めて咲花ちゃんを佑の嫁に迎え入れたく思っていてね」
竜造おじさまがフランクに言う。
「ふたりの気持ちはそれでいいかな」
ここに来るまでに了承済のことだけど、あらためて頷く。
「はい」
私は笑顔を作って答えた。我ながら百点満点の笑顔。
これで両家安泰ね。すると、佑が向かいの席に神妙に口を開いた。
「咲花にはすでにたくさんの負担をかけて申し訳なく思っています」
私と両親に頭を下げて言うのだ。
「この先は、俺が彼女を幸せにしますので、どうか咲花さんを榛名家で迎えさせてください」
丁寧にお辞儀をして言う佑に、父が慌てて言う。
「もったいない言葉だよ、佑くん。なあ、母さん」
「え、ええ」
母も、佑の礼を尽くした態度に頷かざるを得ない。
私は真面目な顔をした佑を見つめた。
思いやり。
そう、佑は思いやりで私と結婚する。弟の無礼の責任を取るため、自身の婚約者の穴埋めをさせてしまったことを詫びるため。
すごくすごく佑らしい。
「ありがとう、佑」
私は佑に向かってぱっと笑った。昔からそうしてきたみたいに、無邪気な妹の顔で。
「よろしくね」
私はごまかすように、佑の背を拳でぽこんと叩いた。
「いて」
「今日はよろしくね」
広々とした個室で両家向かい合う。一応、この会食が婚約式にあたるのだろう。
「こんな形のご縁になってしまったけれど、改めて咲花ちゃんを佑の嫁に迎え入れたく思っていてね」
竜造おじさまがフランクに言う。
「ふたりの気持ちはそれでいいかな」
ここに来るまでに了承済のことだけど、あらためて頷く。
「はい」
私は笑顔を作って答えた。我ながら百点満点の笑顔。
これで両家安泰ね。すると、佑が向かいの席に神妙に口を開いた。
「咲花にはすでにたくさんの負担をかけて申し訳なく思っています」
私と両親に頭を下げて言うのだ。
「この先は、俺が彼女を幸せにしますので、どうか咲花さんを榛名家で迎えさせてください」
丁寧にお辞儀をして言う佑に、父が慌てて言う。
「もったいない言葉だよ、佑くん。なあ、母さん」
「え、ええ」
母も、佑の礼を尽くした態度に頷かざるを得ない。
私は真面目な顔をした佑を見つめた。
思いやり。
そう、佑は思いやりで私と結婚する。弟の無礼の責任を取るため、自身の婚約者の穴埋めをさせてしまったことを詫びるため。
すごくすごく佑らしい。
「ありがとう、佑」
私は佑に向かってぱっと笑った。昔からそうしてきたみたいに、無邪気な妹の顔で。
「よろしくね」



