春の闇に連れ去らレ


まあ今死んでも明日死んでも同じだ。

静かに緤を見ていると、首から手が動き、顎を掴まれて右に向けられた。

ドックタグの冷たい感触が鎖骨辺りに落ちて、視線をそちらに投げる。犬歯が見えた。

「いっ、」

たい。
口を塞がれ、その言葉は出なかった。

首元に噛みつかれている。

え、なんなの? 人間だと思ってたけど本当に犬だった? 三回くらい肩口にかけて噛みつかれた。

「な、な……」
「なんか旨そうだった」

はあ!?

唇を舐めながら緤はぼんやりと喋っている。

血とか出てないよね、と確認する。