春の闇に連れ去らレ


首からぶら下がるそれには緤の名前、性別と血液型が書いてある。

なんとなく手を伸ばし、タグを掴む。

え、今ならこの男の首を絞められるのでは。
酔っているうえに、無防備。

少し迷っている時間が仇となった。

緤はあたしの首に手を添えていた。
敵意は無い、とタグから手を離す。

「何かあった時に、それ引っ張られて首絞められたり、しないんですか」
「今、お前にか」

図星だ。しかも緤はあたしの首から手を離そうとしない。

こういう時、弁明は無駄だ。

グレーの瞳を持ったあの男と同じで。