春の闇に連れ去らレ


「笑えない冗談ですネ」

返事をした。人を殺した分だけ生きながらえる、なんていう宗教に入ったつもりはない。
ナイフが離されて、口の中に入った。
喉奥に突き刺さる直前に、噛みついて阻止する。

鞘がついたままで助かった。剥き身だったら今頃口の中が血だらけだ。

「期限は明日まで。夜にシュウを寄越す。そこでお前の人生は決まる」

ナイフから手を離す男。

「精々足掻くことじゃ」

笑い声。あたしはナイフを口から離すことが出来なかった。










シュウと呼ばれた男は、ナイフをあたしの鞄に放った。