春の闇に連れ去らレ


殆どが麻とシュウの揃った車の中だ。
この家で、あたしだけの前で眠ることはまずない。

あの夜も、あたしがこの家に初めて来た夜も、少しも眠ってはいなかった。

その心中を察することはできない。

「重い……」

重すぎる。
人前で眠れないとか、それくらい他人を信用できないとか。

「麻」
「えー緤さん引っぺがすの大変なんだよ」
「じゃあシュウさん、助けてください」

じゃあ、と呼びかけたものの、呆れた顔をしながら立ち上がったシュウ。麻がそれを見て一緒に立ち上がる。

緤がはがされ、あたしは漸くソファーから抜け出せた。