春の闇に連れ去らレ


上から聞こえた声に顔を見上げると、緤がはまぐりに手を伸ばしていた。シュウは静かに日本酒を呷っている。

「いつかミントのトイレで吐きながらヒバリの名前呼んでたろうが」
「そうでしたっけ?」
「出禁にした方が良いんじゃね?」
「愛の叫びっすよ!」
「うっせえ」

シュウの一言に静まる面々。

「顔がなんだっつーんだよ。事故にあって顔が潰れたらお前、ヒバリのこと嫌うのか」
「そんなことは言ってねえっすよ?」

緤が珍しく正論を言おうとしている。あたしは揚げ物を咀嚼しながらそれを聞く。

「俺は顔が潰れようが死にかけようが嫌いなもんは嫌いなままだけどな」