春の闇に連れ去らレ


るんるんと麻が元の位置に戻り、あたしはテーブルへそれを乗せた後、緤の横のラグの上に座った。

「じゃあ乾杯」

シュウが声をかければ、真ん中でグラスがぶつかり合う。

「うまい! やっぱり得意料理は酒蒸しが良いかも」

麻がはまぐりを啜って言う。いや、酒蒸しが得意ってただの酒飲みなのだろう。

「あ、でも絲ちゃんは顔がなあ」
「そんなことは聞いてない」

心底お断りだという顔で手を振られ、あたしは口の端から酒が垂れそうになった。

「お前まだヒバリのとこ通ってんのか?」
「なんで緤さん、ヒバリちゃんのこと知ってんすか」