春の闇に連れ去らレ


まあ自分で作ってはいるけれど。

キッチンを破壊されては困るので、あたしは鍋を静かに出した。

砂抜きの終えたはまぐりと水と先程の酒を入れて強火にかける。

「絲ちゃんって得意料理なに?」
「急に何の話?」
「可愛いキャバの子がさあ、得意料理は肉じゃがって言うんだけど。マジかな?」
「知らないけど……」
「でも肉じゃがとか料理できる感じじゃね!?」

料理できる感じを出したくて肉じゃがと答えている、という可能性は麻の中にはないらしい。

酒蒸しにバターを適当に添えて、皿に盛る。

「酒蒸しと揚げ物です」
「わー! うまそう!」