春の闇に連れ去らレ


緤がキッチンの方を向いて「麻、水持ってこい」と言う。

耳に光る金のピアスが綺麗だった。
誰かから貰ったのだろうか、そういえば誕生日だったから。

「はいよ、水」
「ああ、どうも」

グラスに注がれた水を飲み干す。それで。

「緤さん、どうしてここに?」

隣に座ってあたしの方をじっと見ている。
水が飲みたいのか。

「ブス」
「……え、質問の答えですか? え?」
「なんでそう傷を顔にばっかり作れんだよ」
「そんなのはあんたの親に言ってくださいよ」

呆れたいのはこっちだ。

あたしはTシャツを着替えたくて、近くに畳んであった麻のTシャツを掴む。