春の闇に連れ去らレ


もしかして、あの後眠ったあたしが馬鹿力を発揮して緤を……と考えてベッド下を見る。誰も横たわっていなかった。

鞄が放置されていた。ナイフはどこにも見当たらない。

寝室から出てリビングへ行く。

テレビの音がしてそちらを見ると、緤がソファーに座っていた。こちらを振り向く。

「顔面湿布妖怪か」

ちょっと笑った。

頬に触れると湿布が貼られていた。両頬に。
額にも違和感があって触れると、何か貼られている。御札か、と思ってそれを剥がす。
冷却シートだった。

「殴られて熱出たんだろ」
「ああ……なるほど……」