春の闇に連れ去らレ


左手で鞘を抜く。それより先に緤が起き上がり、あたしの右手首を掴んで大きく振った。

ナイフが掌から抜けて、部屋のどこかの壁にぶつかった音がした。

そのままぐるりと視界が回転して、ベッドに押さえつけられた。
片手は右手を、もう片手は首を掴まれる。

「ま、アイツが考えてることなんて大半分かってたけどな。プレゼントに女じゃなくて、刺客かよ」

カーテンの隙間から差した灯りが、緤の横顔にかかる。瞳の色が浮かんだ。

グレーだった。

あたしにナイフを渡した男、シュウという男、そして緤は。

「あの人、父親?」