春の闇に連れ去らレ


何が一番マシか、で悩むあたり、今のこの状況が最悪だと分かる。ここがもしかしたら、本当の地獄なのかも。

「やっぱりお前、俺のこと殺しに来たんだろ」

急に声が聞こえて、緤の方を見ると目がギラリと光っていた。
一瞬肩が震えて、その反動で鞄を落とした。

右手に残ったのは握りしめたナイフ。
しかも恐ろしいことに鞘付きだ。

もうひとつ、選択肢があった。
緤を殺そうとして返り討ちに遭い、ここで終わる。

ロープで自分の首を括ったときのことがフラッシュバックする。死ぬのなんて怖くない、か。

殺し合うのは、少しこわいかもしれない。