無意識に鞄の中のナイフを掴んだ。 ここから逃げても行くあてがない。交番に駆け込んで説明したところで成人したあたしが行ける場所は限られている。お金もない。逃げた先で見つかったら、本当に生き地獄が始まる。 このまま明日の夜を待っても、同じか少しマシか。 じゃあ、緤を殺す? 寝ている男の首を掻っ切って、この家のどこかにある電話で、シュウという男に連絡する。そのとき、あたしの手は真っ赤だろう。 その先は、想像できない。本当に自由が待っていても、きっとそれは本当の自由ではない。