暫くして緤はリビングから出て行き、先ほどの寝室へと戻った。
あたしは部屋の隅まで行って、窓の外を見た。ひとつひとつの建物がミニチュアみたいに見える。
これまでの人生において絶対に見ることも無かったし、これからも無かったはずだった。
窓の下に座る。鞄を抱いて、これからのことを考えた。でも、頭に浮かぶのは父が死んだこと、助けを求められる人がいないこと、あたしが居なくなったところで心配してくれる友人の一人もいないことだった。
ごうごうと燃えていた怒りが少し治まってきて、父が死んだことに少しだけ泣けた。
死んだ父を思う自分に、泣いた。



