春の闇に連れ去らレ


「誕生日プレゼントだそうだ」
「はっ、暇なのかよ、くそ爺」

こちらを見て、緤が嘲笑したまま喋った。

「いらねえよ、返品だ。俺はSMにもシュウのおさがりにも興味はねえ」
「一晩だけでも置いておけ」

男は言って、リビングを出て行った。反射的にその背中を追いたくなる。
ここに留まれば、この凶暴なネコ科動物のような緤と二人になってしまう。

神様は無情だ。

玄関の扉が閉まる音がして、同時にそれはあたしの運命の閉まる音でもあった。
何も言わずに、緤はソファーに座ってこちらをじっと見た。

ぎゅっと鞄を抱く。これしか、今の自分を守るものはない。