春の闇に連れ去らレ


どっちだ、と考える。

男と女、どっちだ。

舌打ちが聞こえ、顔を上げる。男は廊下を歩いて行き、扉をひとつ開けた。

中から聞こえたのは喘ぎ声。何をしている最中なのか、明白だ。

「緤、来い。話がある、親父からだ」

女の小さい悲鳴が聞こえる。それから少しして、ドタドタと露出の多い服を纏った女が出てきた。
ぶつかる前に避ける。玄関の扉が閉まる音がして振り向くと、もうそこに姿は無かった。

……外れた。
残ったのは男物の革靴。

「来い」

男の声に、そちらを向く。

リビングに入り、男の後ろに立つ。広いリビングだった。