「なんなんだねっ!?今のは!!あの子は選手だよね!?試合中にこんなことしたら処分も……」
と審判団が東京チームに注意に行くと、
「すみません。でも東京のタイムアウト入れてたので時間は止まった直後ですよ。」
未茉が何かをやらかすと判断した健はすぐタイムを取っていたことに工藤監督も安堵のため息をつく。

「匠!」
交代だと工藤監督から指示を出されるもその場に立ちつくしたまま、動けずにいた。

「……」
‘目を覚ませ。’
彼女からのその一言に自分が健にも翔真にも負けている理由が突き刺さるようだった。

「健、行けるか?」
「はい。」
一気に勝ちにいきたい工藤監督の指示に健は頷くと、

「いや、健さん。俺らで大丈夫です。」

「湊…」
「匠さんはそのままでお願いします。」
工藤監督にそう堂々と翔真は申し出て、
「しかし…」
「俺、今なら最高のプレーできそうです。」
嫉妬の炎が渦巻くエース翔真の発言にマイクはため息つき、
「お前のそれだけは信じてやるとするか。」
有言実行、中学時代から一度火がつくと必ず最高のプレーをする。それを知っていた。


コートに戻ってきた翔真は匠の側に行くと、
「目、覚めましたよね?嫌でも。」
「……!」
彼の視線は翔真から反らすと

「彼女の為にも、健さんの為にも勝ちますよ。」

その言葉に顔を上げるとコートに戻ってきたマイクは二人の肩を叩き、
「よしっ!!一本取ってくぞっ!!!」

「「よしっ!!!行けぇ東京ぉおっ!!!」」

そしてエース健不在でも宣言通り、翔真とマイクが関東会場ナンバーワンのスコアラーとなり、息を吹き返した匠が攻撃の軸となり、強豪茨城相手に逃げ切り初戦勝利を飾った。