TIPOFF!! #LOVE AUTUMN





「健兄、やっぱ出ないの?」
テーピングの剥がれてない指を見ながら未茉は尋ねた。
「ああ。俺いなくても多分大丈夫じゃねーか?明徳のエースがいるし。」
笑みを浮かべるとプイッと顔を背け窓に肘つく。

(突き指、やっぱ嘘くせぇな……)
心配そうに未茉が見つめるも、健は目を合わそうともしなかった。

狭い車内、密着して触れ合う腕と腕からなんとなく昨日されたキスや言葉が蘇ってきて
「だぁぁあっ!!」
照れながらバシッ!!!と健を叩いた。

(左手・・・。いてぇ)


「やっぱり匠さんじゃなくて健さんかなぁ……」
そんな未茉を遠目に見ながらポツリと呟く翔真に、
「何が?スタメンか?」
珍しく思い詰めた表情をしてるのを見てマイクは、さすがに翔真といえども当日となりゃ緊張感を持ってくれるのかと思いきや、

「昨日の彼女の心を奪ったのは。」

はぁっと大きなため息をつき虚ろな目で悩ましげな表情の翔真に
「お・・お前って奴は・・・」
ぷるぷるっと怒りで身体を震わせ程々呆れ返るのであった・・。


小型バスの車内は行きのバスとは違い、負けたら終わり即ご帰宅の一発勝負に向かうだけあってピリッとした空気が監督からも選手からも漂っていた。

東京を代表するスターターはいくつものの大舞台慣れはしているが、サブ組の王子や大成メンバーの早乙女もプレータイムが巡ってくるか緊張している様子だった。

そして昨日未茉に振られた匠は一睡もできずにいて精神的にも少し参っていた。